小説『わたし、定時に帰ります』に見る定時帰りの難しさとは

小説『わたし、定時に帰ります』に見る定時帰りの難しさとは

はじめに

現在、ドラマ『わたし、定時に帰ります。』が絶賛放送中ですね。

主演・吉高由里子が様々な同僚の悩みを解決しつつ、みんなが定時に帰れる会社作りに励む、というストーリー。

実際は、

「見てると切なくなる。」

「現実と全く異なる。」

などの批判的意見も多く伸び悩んでいるようですが、私自身に関して言えば、「うんうん、確かに。」と納得しつつ面白く見ています。

ただ、ドラマもそれなりに面白いのですが、ドラマを面白いと感じる方には、ぜひとも原作小説も併せて読んで欲しいところ。

ドラマでは1話完結でチームメイトの悩みを解決していくため、ともすれば底の浅い悩みのように見えてしまう所ですが、小説では各問題の根深さを全体のストーリーに散りばめる形でうまく描かれています。

そういうわけで、今回は印象的なキャラクターを何人かピックアップして、彼ら彼女らが定時に帰れない理由を振り返ってみたいと思います。

吾妻

個人的に、このドラマ・小説の中で最も印象深いキャラクターは吾妻です。

この吾妻というキャラクターは、まさしく「会社の住人」

会社を住処とし、寝袋まで持ち込んで会社に住んでいるという始末。

小説では仕事の出来ない男、ドラマでは能力は高いのに生産性の低い男、のような描かれ方をしていますね。

典型的な、仕事のやり方がマズく、生産性が低いにも関わらずそれを改善することなく、いつまでも会社に残りダラダラと仕事を続けるタイプです。

こういうタイプは、仕事自体はきっちり完了させるため生産性の低さを悪びれることなく、開き直る性格でしょうか。ドラマでは、そんな感じでしたね。

実際の所、集中して業務をこなしているわけではないため、ミスが多く、あまり信頼されない所もありそうです。

原因は色々とありそうですが、1つはその生産性の低さ

ドラマでは、生産性を向上させるテクニックを駆使して、業務能力を上げて、定時までに仕事が終わるような努力をしていました。

さらに、ダラダラと会社に残る理由の1つに、退社してもすることことがない、というのもあります。

そこで、趣味を見つけるのも1つの解決策として示されていました。

ダラダラと会社に残ることが、どれほど自分の時間を無駄にする行為であるか、この辺りが作品の中で示されていたように思います。

種田

彼が定時に帰らない理由は、仕事が好きでもっと仕事がしたいから、さらには能力が高く人に信用されているため仕事が集まってくる、というもの。

また、下手に部下が仕事をするよりも自分でやった方が上手く行くと考える、典型的なプレーヤータイプの管理職です。

(とは言え、実際には種田は管理職としてのマネジメント業務も卒なくこなしていましたが。)

こういうタイプの人の所には、どうしても仕事が集まります、まして仕事好きでそれを断らないのなら当然のこと。

ただ実際に現実を見ると、こういうタイプの人ってそこまで多くないのでは、と個人的には思っています。

・・・・・・こういうタイプの人間だ、と思っている人は多そうですが。

作品の中で彼を定時に帰らせる方法については、物語の根幹に大きく触れるため、ここでは触れないで起きますが、↑のような勘違いタイプの人に関しては、当人の認識が間違っていることを示すのが良いように思います。

つまり、その人は好きで仕事を引き受けているけれど、実際にはその仕事を他の人に回した所できちんと成立する、ということです。

自らの勘違いを認めるのは難しいことです、それが長年の蓄積による勘違いであればなおさら。

ただ、その人が定年間際でもない限り、まだ先のある社会人であれば、きっと将来に繋がることのはず。

東山

最後は物語の主人公、彼女は定時に帰るタイプの人です。

しかも、高い生産性できっちりと仕事をこなし、必要なことを終えた上で定時に退社します。

彼女にまつわる問題として作品で取り上げられているのは、案の定というか、周囲のやっかみです。

当人の能力の高さを認めることなく、ただただ定時で帰っているという事実だけを取り上げて悪者にしてしまう。

いかにも、ありそうなことではありませんか?

残念なことに、東山はそういった誤解を解くことを諦めているフシがあります。そういう、サバサバした性格ということもあるのでしょう。

実際には、そういった誤解を解くのはとても難しく、非常に労力が必要とされるものです。また、その割に何ら自分のためにならない、というあらゆる取っ付きにくい理由を備えてもいます。

ドラマで↑のような問題がどこまで描かれるのか、それは正直私には知りようがありません。

ただ、原作小説においてはしっかりと取り上げられています。

私が、ぜひ原作小説を、と勧める理由の1つもそこにあるのです。

周囲のやっかみ、これを個人で解決することは実際にはとても難しいことでしょう。

だけど、もしこの原作小説を読めば、その内容を真摯に受け止めれば、そのうち何人かは自らの考えを思い直す余地があると思います。

この小説『わたし、定時に帰ります。』は1つの作品として面白いばかりではなく、現実世界の東山を救うことが出来るかもしれない、そういう側面も持った作品かもしれません。

むすび

私は、どちらかと言うと定時で帰る人です。

それは、まだ若かりし頃、ちょうど東山のような働き方をする先輩が身近にいたことが大きいです。

そのため、定時を過ぎても仕事をすべし、的な間違った考えが育まれることはなく、どちらかと言えば東山よりの考え方を持つことが出来ました。

正直、仕事現場において周囲の人の影響力はとんでもなく大きいのだと思います。

だからこそ、この『わたし、定時に帰ります。』を読んで東山タイプの人が増えれば、そこからはネズミ算的に同タイプの人が増えていくに違いないのです。

その取っ掛かりになるかもしれない、そういう意味でもこの作品はとても凄い力を秘めた作品でしょう。

b. 小説カテゴリの最新記事